タイトル『芽』













こんにちは、マグマ団としての生活はどうですか?




















仕事疲れした体を夜風にさらしながらベランダに無造作に置いている椅子に腰をかける。
私はマグマ団に入ってずいぶんと世界の見方が変わっていた。
マグマ団に強制入団させられる前、そういう団にはあまり興味を示さなかった。
あまり好意的にも思わないしだからといって嫌いなわけでもなかった。
ただその集団が好んでやっているのなら目標目指して頑張れ、みたいな無責任なことばかり考えていた。

今になっては意外に本気で陸地を広げようとしていることやそれに関連するグラードン、ライバルとなるアクア団・・
そういうことを見て知ることによって『別に悪くはないかな』と思い始めた。
まあ環境問題に深くかかわることは承知の上での無責任な結論である。
入団させられた初めのころは『世界破滅につながる』と本気で考えマグマ団を抜けようと何度も試みて見るものの同居人、私を強制入団させた張本人に何故かあっさり見つかってしまった。
元々自分の家なので変な話になるが、次にとりあえずいつも同居人にばれるので家出すれば雲隠れできるかなと行動を移してみようとするものの、実行する前に尋問されて負けてしまったのである。


まあ色々と行動して分かったことは『逃亡不可能』という言葉であった。
『別に悪くない』という結論はその経験からの諦めも含んでいるだろう。
そしてなんだかんだ言いつつも一応仕事をこなしている内に、自分の強さが称賛され数日も経たず幹部に昇格していたのである。


こう改めて考え直すと無理やり同居人に誘導されてそれにしぶしぶ追いかけているような気がして少し気に食わない。
だがこれが現実なので仕方ないと諦めている。
私はなんて諦めの速い人間だろうか。




「おい、そんなところでぼーとしてると風邪引くぞ」




そういいながら後ろからに上着をかけてやる。
上着がベランダに吹き抜ける肌寒い風を暖かく守ってくれる。
夜風に吹かれてストレートな金髪がキラキラと輝きながら揺らしながら、の隣に座る。
普段着ている団服とは違い黒い動きやすそうなパーカーに長ズボンをはいている。
ごく最近までずっと憎んでいた相手だが、今ではトラブルなく暮らせるところから大分落ち着いてきたと思う。
私を強制入団させ強制的にここに住み着いた男、ホカゲ。
中途半端に優しくて、中途半端にクールなわけの分からないやつ。
ときどき考えていることがまったく読めなくて苦労させられることもあるが根はいい奴である。



「ありがと」




「お前最近逃亡計画とやらをしてないな」




椅子に座って星を見上げながら無表情に、しかし少し皮肉げにいう。
逃亡計画。逃亡計画というのは初めてホカゲに尋問されたとき堂々と言ってやった私の作戦名。
意味はそのまま逃げる計画。
そういうとホカゲは見事に噴出した。
つまりバカにされているのである。
そのときにも『俺から逃げられるとでも?』などと皮肉げにはき捨てられたのである。
その当時はただのセクハラ上司としか思っていなかったので『あたりまえだ』と挑戦を受けたのである。
今思うと餓鬼の低レベルな言い争いである。





「ホカゲから逃げられるとは思ってないし。
 それにもうどうでも良くなった」




「少しは利口になったじゃねーか。」





なんか嬉しそうに、というか褒めるようにいうホカゲに少し眼の下の筋肉をピクピクさせながらも受けながす。
何を言っても綺麗に避けられて余計にバカにされるのはもう分かっているからである。
もうこれ以上遊ばれるのはごめんだ。
けど追われていたときからずっと思っていたことがある。
なんとなくなんて返すのかが想像しきれないので、とりあえず言ってみることにした。




「一言一言がなんかエロい」




「そりゃ俺がエロいからだろ?」





即答。
しかも当たり前のように恥じらい無しに返してきたことがムカつくがホカゲらしいと思う。
だが少しくらいは間を入れて欲しかったと内心思う。
そう無駄な妄想を膨らませて口にだした自分があほらしく感じた。





「で、何が言いたい」






「なんでそんなに嬉しそうに言うんですか、我(わが)上司」





妙に嬉しそうに、しかもあまり笑うことが無いホカゲが少し口元を歪ませて不敵に笑っている。
それがいつもの硬めなイメージを壊させる。
恐らく本人は気づいていないだろうがこれだとただの腹黒にしか見えない。
とりあえず身の危険を感じさせる状態である。
いまさらになって言うんじゃなかったと後悔させられる。




「じゃっ私もう寝るよ!!」





そう言って逃げようとするが無言で片腕を握られてしまった。
うっと息詰まらせて改めて座りなおす。
そのまま無言で腕を握られたままというのが余計に恐ろしい。
どうせ抵抗したら余計に強く握りだすんだろうなと思いつつ空を見上げた。
空には大きく月がいて、いろんなところに散りばめられた星で埋まっている。
ぼーと見つめていると陸と海と空の伝説が頭をよぎる。
もしも伝説どおりならばリーダーのやろうとしていることは、自分たちの首を絞めることになるのだろう。
それじゃなくとも自然の秩序を乱してしまうのだろう。
なら私はリーダーを止めるべきなのかもしれない。


そう白昼夢にのめりこんでいるとすぐに睡魔が襲い掛かってきた。
今ここがベランダでこんなところで寝たら風邪を引くということは分かっている。
けど握られている腕から来るぬくもりと、一人じゃないと教えてくれるホカゲの暖かさで動く気力がせずそのまま意識が遠ざかった。




























、いい加減起きろ。」





「んあ?」






ホカゲの声で起こされていつもの瞬間で時計を見ると針は朝の10時を指していた。
眠気眼で時計をしばし見つめたまま大事なことを思い出す。





「あーーー!遅刻した!!」





ホカゲは耳に手を当て明らかにいきなりの大声に嫌がっている。
普段マグマ団基地に出勤する時間は8時である。なのに2時間の遅れはとてつもないミスである。
眠気眼のまま顔を洗いに洗面所に急いでいこうとするにニヤッと笑いながら一言。




「残念ながら今日は休日だそうだ」




その言葉を聞くや否や急いでいた足を止めダラッと座り込んだ。
不敵に笑うホカゲにギロッと軽く睨みを聞かせつつのんびり洗面所に足を運んでいった。
もちろん睨んでホカゲに勝てる筈が無い。
だがあの不敵な笑いをみると思わず睨みたくなるのだった。




「休日なら休日だって早く言ってよ・・」




そう呟きながらベットにダラリと座り込む。
あいからわずホカゲはの反応にケラケラと笑うだけである。
なんかムカツク、そうは思った。
がじっとホカゲを眺めていると何を思ったか軽く鼻で笑った。




「貴重な休日だ。
 なんだからどこかに出かけるか?」




「行く」




「やっぱ即答しやがった。」





ホカゲは顔には出ていないが少し嬉しそうに『行くなら早く準備しろ』と呟いた。
そんな彼にクスッと笑いは朝食を取り始めたのであった。














素直に言えない男と














天然な娘の小さな恋の芽































☆☆☆☆★☆

あっこれおまけあります。
さんがホカゲに腕を掴まれたところのホカゲ視点です。
というか蚊に刺されまくって掻きながら打っています(ぉぃ

シリアス物の方が書きなれているので今回は
とりあえず甘いの目指して見ました。













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